■芦ノ湖の水温
初春
水温はその時々で魚に対して微妙な影響を与え釣果にも大きくかかわってきます。芦ノ湖では解禁当初の水温が、かつては4度~5度で始まったものでしたが、最近では温暖化の影響か約2度上がった6度以上で始まることが多くなりました。
芦ノ湖のマス類の最適温は13~14度で、湖の現行の水温がそれ以下の低温時ではコンマ1~2度でも上がった方がよく、逆にそれ以上の高温時では少しでも下った方が良いわけです。
したがって初期の低水温時では釣のベストアワーと言われる朝・夕マズメより、気温が上がった日中の方が遥かに魚の活性は高くなり釣りやすくなります。
また、冷たい北風より暖かい南風がそよそよと吹き、上着を1枚脱ぎたくなるような観光日よりといったような日が絶好の釣日和ともいえます。
とは言っても、釣行日が雪の日も寒い日もあるわけで、そのような日でも魚が一日中絶対に口を使わないというわけではありません。動きが緩慢になり食欲が鈍るだけで、本能的には生きて行くために何かは食べたがっているはずです。
その日のうちの一時でも太陽が雲の合間から出たり、風の合間だったりとか、少しでも暖かく感じた時がチャンスです。動きが鈍そうなら魚の動きに合わせてリトリーブはゆっくり、食欲が無さそうなら小さいルアーやフライをセレクトして釣るようにすればよいのです。
春の湖では日差しが強くなれば、まず水面と岸辺から水温が上がるのは当然ですが、大気が冷えてくると逆に水面や岸辺から真っ先に温度が下がりはじめるために、魚は深みと浅瀬をより快適な水温層を求めて移動を繰り返します。
勘を働かせ、キャストとカウントダウンを繰り返しながら泳層を探るようにします。
晩春
初夏を迎え水温が13~14度の最適温を越えてくると、今度は北風や北東風が吹いて肌寒い時の方が良いコンディションと言えます。この頃になると湖全域では、ユスリカやカゲロウの羽化が盛んになり、マスたちは安定して水面の餌を捕食することが出来るようになり、餌につられて岸辺からやや離れた沖の表層を泳ぎ回るようになります。
この時期が唯一ドライフライでのトップウォーター釣りを楽しめる面白い時期でもあります。
初夏~盛夏
そして水温が16度を超えるようになると冷水を好むマスたちは徐々に水温の低い深場に沈んで行き、朝夕晩の涼しい時間帯だけ水面の餌を求めては適水温層を浮き沈みします。岸辺にはバスや鯉・鮒などの温水漁が活発に行動するようになり、岸辺のポイントは温水漁と冷水漁の交代期となり、これ以降のマス釣りは水温が再び下がる秋までは、トローリング釣りが主体となります。
トローリング釣りでは水温躍層が大きく影響してきます。初夏から盛夏にかけて気温の上昇と共に湖の中はお風呂状態になります。暑い日差しに水面の温度が暖められ、湖底の温度と極端な差がつき、比重の違いから水面と湖底の水が全く混ざり合わなくなります。水面から水深10mまでは水温20~25度の比重の軽い水となり、風や波の力により循環を繰り返します。水深20m以深40mの最深部では夏でも水温が7~8度と安定しており比重は重くなります。
比重の重い水は外部からの力が及ばないためにほとんど循環が無く低酸素になっていきます。その間の水深10mから20mの間の急激に水温の変わる層を水温躍層といい、マス類は好むと好まざるとにかかわらず、上層は熱くて適せず、深層は酸素が希薄になるためほとんど躍層の中で生活することになります。したがって釣り人側からみれば、その時期にトローリングのタナを設定するのが非常に容易になるというわけです。
秋
秋になって、躍層が崩れる頃には(秋から初冬にかけて水温が下がり、水の比重が上・下均一になり再び湖全体の水がまじり合う時のことをターンオーバーといいます)また魚の活動範囲も広範囲になるために産卵期ということも合わせて、秋のマス釣は難しいと言われる要因の一つになるわけです。
積算温度
その他には直接釣には関係ありませんが、魚類の産卵から孵化までにかかる温度を積算温度と言い、
例えば、芦ノ湖のワカサギが水温13℃の畜養池で十日間で孵化するとすれば、積算温度は130度となり、自然の湖の中が10℃だとすれば孵化するまでに13日間かかるといったことを積算温度と言います。
その他に芦ノ湖には流入河川が少なく湧水の湧き出ている所がいたるところにありその付近では井戸水と同じように一年中13~16℃の水温を保っています。
冬は温水魚の冬眠場所に、初夏にはウグイが産卵に、秋にはヒメマスが産卵の為にに寄って来たりと、色々な魚が、色々な理由で集まる場所でもあります。